第15章 照島遊児 奪いたい
翌日
誠実君に話をすると言って出て行った花澄をこっそりつけて行った
「話‥なんとなく言われることは想像できてるけど」
並んで座っていた花澄の肩が小さく跳ねる
『っ‥突然呼び出してごめんなさい‥それで‥‥その‥色々‥ごめんなさい‥』
ベンチからガタッと立ち上がると
深々と頭を下げる
「照島‥か?」
何を言われるか予想していたのか迷いのない声で問いかける
『えっ‥な‥なんでっ‥』
「そりゃ‥好きな子の事はよく見てるし分かるよ。その事も分かってて、告白したしな」
『っ‥!澤村さんを傷付けるような事して‥本当にごめんなさいっ‥照島君の事忘れようとして‥私は‥』
花澄の声が震えるように小さくなると
座っていた澤村さんが立ち上がって身体を抱きしめる
「謝らないで‥俺はそれでもいいと思ったんだよ‥最初は照島の代わりでも何でもいいって」
『澤村さん‥』
「でも‥このまま易々と引き下がるわけにもいかないからな‥奪われたら奪い返すまで」
そう言うと物陰に隠れていた俺の事にはなから気付いていたのか
ばっちりと目があった
「‥真面目で誠実そうに見えんのに意外と肉食系かよ」
「照島こそ‥こんな所まで彼女をつけてきちゃうなんて‥意外と心配性なのか?」
『えっ?!照島君っ?!なんでここに‥っ?!』
俺達の間であたふたと慌て出す花澄をこっちに引き寄せて
真っ直ぐに誠実君を見据える
「まぁこんなに可愛い彼女がいると、心配性にもなるってね」
「それもそうだな‥いつか俺に奪われるかもしんないしな」
にこりと笑うその顔は
爽やかそうに見えて
瞳の奥がギラギラとしていた
「くえないやつ‥」
「まぁ‥今だけは身を引く事にするかな!」
そう言うと俺の腕の中でハラハラと事の成り行きを見守っていた花澄の頭を優しく撫でた
「付き合えてすっげー幸せだった!ありがとう!けど‥諦めるつもりなんて全くないから‥照島より俺の事が良くなったらいつでも電話して?」
『っ!こちらこそっ‥本当にありがとうございましたっ‥』
そのまま遠ざかっていく背中を2人で見届けた