第12章 大切なもの【沖田視点】

それからしばらくして自分の部屋に戻り、そのままベッドの上に仰向けに寝転がった

｢…｣

姉上に頭撫でられんの随分久しかったな…

でも…

- 私は十四郎さんに愛されてるって思えるから辛くても苦しくても頑張れてるんだなって思うの -

姉上の気持ちは…よくわかった気がする。

上半身だけを起こし、枕元にある携帯に手を伸ばす

悔しいが今言わねェと一生言えねー気がする。

意を決して俺は土方さんに電話を掛けた

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙ

本当に姉上の幸せを願うなら弟として…男として言わなきゃいけない。

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙ

｢なんだ？総悟か？｣

｢ﾁｯ、出てんじゃねーよ土方コノヤロー｣

｢いやお前が掛けてきたんだろーが！｣

｢違いやすよ、土方さんが出なければいいなぁーって思いながら掛けたんでちょっとビックリしただけでさァ｣

｢いや意味わかんねェよ！つか出て欲しくねェなら掛けんじゃねェ！｣

そんな特に意味のないやり取りを繰り広げているといつもの調子で土方さんが言う

｢あーそういや明日の銀八会、俺が幹事やることになったから店には先に行ってんぞ｣

｢…｣

｢オイ総悟、聞いてんのか？｣

｢聞いてやすよ｣

｢…どうした、何かあったのか？｣

｢いや…別に。強いて言うなら何でこんな夜遅くに俺は野郎と電話なんかしてんのかなって思っただけでさァ｣

｢知るか！こっちが聞きてェよ！！｣

"用がねェなら切るぞ！"と言って電話を終えようとする土方さんに俺は部屋の外を見つめながら呟いた

｢土方はさァ…｣

｢あ？｣

｢何で姉上に手ェ出さないんですかィ｣

｢な"ッ！ｹﾞﾎｯｹﾞﾎｯ｣

電話の向こうで噎せる土方に若干の苛立ちを覚える

｢変な想像してんじゃねーよ殺すぞ｣

｢し、してねェよ！テメェこそいきなり何言ってやがんだ！｣

｢別に…素朴な疑問でさァ｣

"素朴か？"とツッコむ土方を無視して再度疑問をぶつけると野郎は言いにくそうに言葉を詰まらせた

｢お、俺は…｣

｢…｣

｢ようやく伝えられたからっていうか…｣

やべェ…

｢なんつーかその…｣

すっげえ腹立つ。

｢惚気てんじゃねェよ死ね土方｣

｢の、惚気けてェよ！！

ただ…俺はアイツのこと…大事にしてやりてェ、だけだ！｣

｢…。｣

俺はこの時、電話の向こうで野郎がどんな顔をしてるのか何となく想像出来た