第21章 卒業【最終回】
[沖田side]
ったく銀八の野郎…人使い荒すぎでさァ。
大切なもんか…心当たりは全くねェが何となく銀八のあの笑い方には嫌な予感がした
校舎にはほとんど生徒はいなくて、廊下の窓から外を見るとどうやら皆グラウンドに集まってるみたいだった
さっさと取って俺も皆ところに行くかねィ。
そんなことを考えながら教室の扉を開いた
だが目の前に映った人物に俺は驚きを隠すことが出来なかった
「な…んで」
『…久しぶり!沖田』
そう無邪気に笑う、懐かしい顔
- 沖田くんの大切にしてたもん置いてきちまったんだよね -
こういうことかよ…。
「くそ…銀八ィ」
『どうどう?ビックリした?』
ほんと、心臓に悪いことしやがらァ
「ビックリした」
『よっし!ドッキリ成功!!』
「お前…向こうの学校での卒業式あったんじゃねーのかよ」
『うん…でも行ってない…朝早く家出てきたから』
そう言って微笑む吉野を見つめた
『だって私、この学校で卒業したかったんだもん…』
「…」
それに、と続けて吉野は笑う
『沖田に会いたくなった!!』
本当にこいつはこういうセリフさらりと言いやがるから
「ばっかじゃねーの?」
『ば、ばか!?』
"バカ"と書かれた矢が頭に刺さった吉野にゆっくり近づく
「なぁ吉野」
『な、なに?』
「お前……ひょっとして
太った?」
『な"!!』
顔を真っ赤にさせて俺を叩こうとする彼女の手首を掴み自分の方に引き寄せた
ぎゅっと抱き締めると吉野は肩をビクッとさせた
『えっ…え?』
顔は見えないがきっと真っ赤にしてわけがわからないような顔をしているだろう
そんなこいつだから、そんな吉野だから
「俺も…会いたかった」
俺は好きになったんだ。