第20章 繋がる想い
家に着くと部屋中段ボールだらけになっていた
『歩兄?…歩兄ー!』
「ここ…助けて」
声のした方を向くと段ボールの下敷きになって埋まっている歩兄がいて
『え、どーしてそうなった!!』
引っ張り出すと歩兄は全身埃まみれになっていた
「いやぁ、やっぱ引っ越しって大変だな」
そう言って笑う歩兄につられて私も笑った
「あ、そういえばこれ何のアルバム?整理してる時に見つけたんだけど名前書いてなくて…」
『ぬああああ!!』
私は急いでそのアルバムを歩兄の手から奪い取った
アルバムをぎゅっと抱える私に歩兄は目を点にして固まった
危ない危ない!沖田の超絶かっこいい写真を納めた私の秘密の沖田萌えアルバムを見られるとこだった!
これじゃ私が変態と思われちゃうじゃん。
「あの…桜、ちゃん?」
『違うから!これあのあれ…昔好きだったアイドルの水着写真!!』
「いやまだ何も言ってないけど…昔?じゃあもういらなくね?」
『いやいやだめだめ!まだいるの!まだ私の目には全てを焼きつけてないのッ!!』
そう言うと歩兄は若干引きぎみに笑った
「ヘェ…そ、そうなんだ」
『う、うん!』
良かった、バレてない!
…あれ、ていうかどのみちこれ私変態になってない?
それから数日間は荷物をまとめるので大忙しだった
『…明日か』
"31"と書かれたカレンダーの数字を指でなぞる
「…ごめんな」
『え?』
振り向くと歩兄が少し申し訳なさそうな顔をして立っていた
「2ヶ月後って言ってたのにこんな早くになっちゃって…お前だってまだ学校のみんなと色々話したかっただろう?」
『…平気だよ。みんなとはたくさんの思い出があるから…言葉なんてなくても気持ちは同じだもん』
「…お前って…ほんと強いよな」
『…えっ』
「いや、何でもない。…もう今日は遅いから寝よう…おやすみ」
そう言って背中を向ける歩兄を横目に私はもう一度カレンダーを見た
- 帰ってきたとき、一番最初に俺に会いにくるってなァ -
そうだ。
悲しいことなんてない、だってまたきっと会えるんだから。
『大丈夫』