第15章 交差する想い[沖田side]
[沖田side]
あれから俺達は色々歩き回ったが、特別何かをするわけでもなくお互い無言のままだった
「向こうのベンチで少し休憩するか?」
俺がそう聞くと山本は静かに首を縦に振った
屋台やらがある所から少し離れた場所にあるベンチまで行き二人で腰を下ろす
薄暗いし人気も少ない…あんま長居は出来ねーな。
そんなことを考えていると不意に山本が口を開いた
「もう少ししたら花火、見えるね…」
「…そうだねィ」
「私ね…一人っ子で小さい頃から親に甘やかされて育ってきたの。欲しいものは何でも手に入れて、何をするにも絶対普通の人より上を目指してた…」
「…」
「小さい頃はね、それが当たり前だと思ってたし何不自由なく暮らしてた…。でも気づくと私の周りにはいつも家族がいて外に出ると孤独だった。
家族以外の人と関わるのが怖くなって中学のときはほとんど学校にも行かなくて…だけど心配して家に来てくれる友達も一人もいなかった。そこで私は初めて気づいたの、今まで私は自分自身で何かを得たことは一度もなかったってことに」
俺は黙って彼女の話を聞いていた
「高校では初めてのことばかりだった。転校生って形だったけどみんなすごく優しくて、温かくて。そのとき最初に話しかけてきてくれたのが桜ちゃんだった」
- 私吉野桜、よろしくね -
「本当に嬉かった…。人生で初めての友達だったから」
そう言って微笑むと彼女はそっと俺を見つめた
「でも…まさか最初に好きになった人が同じ人だったなんて驚いちゃったな…。それでも桜ちゃんは私のこと友達って言ってくれた…。一途で負けず嫌い、なのに時々男の人より男前になったりして、ほんと…変な子」
「でも、何でも持ってる私に欠けてるものを桜ちゃんは持ってる…。そんな彼女だから自然と皆が集まってくるの…だから沖田くんも桜ちゃんのこと好きになったんでしょ?」
山本の言葉に俺は静かに頷いた
そんな俺を見て山本はクスッと笑い、立ち上がった
「ふぅスッキリしたぁ!これで何とか諦めれそう…かな?」
「山本…俺っ」
「みてみて、花火上がるよ!」
そう言って山本の指差す方を見上げた瞬間
「!?」
花火の音と同時に俺の唇に彼女の唇が重ねられた