第14章 片想いに終止符を
[沖田side]
最初から期待はしていなかった
あいつの足の遅さはクラスみんなが知っている情報で本人も否定する気なし
そんなあいつを何故このリレーに出させたのか、俺は薄々わかっていた
隣にいる銀八をじっと睨むと実に憎たらしい笑みを浮かべ野郎は言った
「…安心しろ沖田、吉野ならやってくれるって」
「安心出来るわけねェだろィ、確実に負けまさァ」
「大丈夫だって!」
「どっからそんな自信が…」
「だってあいつ、沖田くんのこと大好きだろ?」
そう言ってどや顔混じりに笑う銀八
ほんと、ヤな大人でィ。
結果吉野は最下位だった
何でさっきまで一番有利に走ってた奴が最後の最後で転けてビリになるのか理解に苦しむ
山本が1位で銀八は満足しているようだった
最終的に焼肉行ければ何だっていいんだろう。
吉野は砂まみれの顔を俺に向けて顔を青くしていく
俺はゆっくり彼女に近づき、そばまで行って腰を下ろした
「吉野、」
まぁ、予想はしてたがこいつにしてはかなり粘ったほうだと思う。
俺は吉野の頭を撫でた
吉野は驚いた様子で目を大きく見開いた
なんか、今なら言えそうな気がする…。
「吉野、俺」
「沖田くん!」
これも予想は出来てた
振り向くと山本が恥ずかしそうにしながら俺のシャツの袖をぎゅっと掴んだ
そうだった…
確か優勝したらキス…。
横目で吉野を見ると不安げな顔で俺をじっと見ていた
「…。」
んな面してんじゃねーや…。
「あの…沖田くん?」
山本の呼びかけに答えると俺は彼女の手を掴み歩き出した
「人気のないとこに行きやすか」
そう言った俺にガクリと肩を落とす吉野
ダメだな、俺ァ。
んなことしたって余計距離が出来るだけなのに…
アイツのあんな顔見るとついからかいたくなっちまうんでィ。