第12章 聞きたいこと
[沖田side]
『い、今のきこえた?』
「…何がでィ」
ほんとは思いっきり聞こえてたけど、敢えてとぼけたフリをした
「オメェ、何も食ってねーのかよ」
『う、うん…』
ほんと、バカで間抜けで呆れる
俺は吉野にもう1つの焼きそばパンを突きつけた
『え?これ…』
「俺2つ買ったんでィ、食欲ねーからやる」
そう言うと吉野は目を輝かせて俺を見た
『い、いいの?』
「あぁ、返品不可でさァ」
彼女は焼きそばパンを見つめ呟いた
『どうしよう、嬉しい』
そんな何気ない言葉に反応してしまった俺は慌てて顔を隠した
すると吉野は焼きそばパンを写メするとか言いながら携帯を取り出そうとする
俺はその瞬間
『むぐっ!!?』
吉野の口に焼きそばパンを突っ込んだ
「さっさと食べろ変態女」
『ッ!』
彼女は慌てて俺から少し距離をとると顔を真っ赤にさせた
『…ぃ』
「あ?」
『ずるい…沖田』
「は?…」
しばらくして口を開いたかと思えば吉野は俺をキッと睨んだ
『どうしてあの日…私にキスしたの?』
彼女の言葉に俺は驚きを隠せなかった
いや、隠したかったわけじゃなくきっと俺は自分でもわからなかったからだと思う
伝えてもいいのか…伝えねェとダメだ
でもこの感情をどこか認めていない自分もいる
まだ夏は始まったばかりだ。
伝える機会なんてまだまだたくさんある
別に今すぐじゃないといけないわけじゃない
【だからまだ…】
俺は吉野から視線を逸らし、屋上の扉の方へ歩いた
そしてドアノブに手をかけ彼女を振り返った
「それくらい自分でよーく考えろィ」
『は?』
【その答えは言ってやらねェ】