第3章 声優
私の答えを聞いた五条先生は、青い瞳を大きく見開いた。
次の瞬間にはその瞳はキラキラと揺らいでいて。
「寧々の決めた事だから応援するよ。ただし、ファン一号は間違いなく僕だ」
「デビューは夏頃で…」
「絶対に僕だ。寧々が僕と付き合った後も、週刊誌に撮られないように気をつける」
「あ、えと…」
「寧々のことを諦める気はないよ。よくよく考えたら、声優と僕の妻だって兼任できる」
そんな二足の草鞋もあるんですね、と納得しかけた。
五条先生は私の肩を優しく叩いて、呪術師という世界のことを「思い出」にしてくれていいと笑った。
同級生とは離れ離れになる進路を選んだ私だけど、レッスンを積んで予定通りに夏にデビューを果たした。
悲鳴や叫び声といった危険を感じた時の演技が、ずば抜けていると話題になった。
初めて主役に抜擢された異能力バトルアニメでは、「本当に異能力による戦いをした経験があるみたい」と絶賛された。
呪術師とは違う道を進んだ私だったけれど、旦那が最強の呪術師なもので、一概に「思い出」とはならなかった。
なんだかんだ呪術界には身を置いたまま、今日も収録に向かった。