第3章 アイドルじゃない
今日はおらふくんが俺の家に遊びに来る日だった。
この日のためにリビングだけは()掃除をし、ソファに座ったおらふくんに飲む物を出そうとキッチンに立っていると、なんだか明るい音楽が流れ始めた。
なーんか聞いたことあるなぁと飲み物を持ってリビングに戻ると、おらふくんは自分のタブレットでドズル社動画を見ていた。
「お茶でいいか?」
「ん、ありがとうMEN」
俺がテーブルにお茶を出すと、そう礼を言っておらふくんは一口飲む。だがおらふくんの目は動画に集中していた。
俺も画面の中を覗き込むと、そこにはアイドルの格好をした俺たちがいてつい噴き出してしまった。俺たち、アイドルの格好が似合わな過ぎるだろ。
「やっぱおもろいよなぁ、これ」
おらふくんと俺の面白いと思った点が果たして本当に同じなのかどうかは分からないが、確かにこの動画は攻めた企画だった。アイドル選手権。男六人が揃って最強のアイドルを目指すって……今思えば面白過ぎる状況だ。
「急になんでその動画見てんだ?」
と俺が聞くのは、その企画はもう数ヶ月も前の動画だったからだ。するとおらふくんが、もう一つの動画を開いて俺に見せてくれた。
「この前、人気だった企画全部盛り撮影したやん? それであったやん、アイドル選手権の企画」
「あー、そうだったな」
アレもかなり大変だったな、しかもますます鬼畜になっていたし、と俺が言うとおらふくんはケラケラと笑った。
「それでさ、アイドル選手権ってそんなに人気やったのかなぁって思って見てたらおもろくて」
俺の家に来て早々動画を見始めるおらふくんの行動は時々……いや、ほとんど突拍子だった。まぁそこがいいんだけどね、なんて思ってしまうくらいには多分俺はおらふくんに甘い。