第3章 導き手
今回の動画撮影の企画は建築バトルだ。どれだけロマンのある建築が出来るかどうか、ネコおじを含めて三人一組チームで建築バトルをするらしい。
審査はもちろん、あとから来るタツナミ先生だ。
ガチャで決まったチーム分けは、俺とドズルさんとネコおじ。向こうのチームはぼんさんとおんりー、おらふくんだ。
「ロマン建築って、前にもやりましたよね」
何作ろうかなぁとウロウロ飛び回りながら俺が話し出すと、ドズルさんがこう言った。
「うん、そうなんだけど。最近なぜか妙に伸びてきたから、またやることになったんだ」とドズルさんは包み隠さず視聴回数のことを話す。「どういうのがロマンかな? なんかイメージある?」
「うーん……前回はどんなの作ってたの?」
ネコおじは建築バトルに初参加だ。イメージが掴めないのだろう。ネコおじの視線は俺に向けられた。
「前は、RPGみたいな雰囲気のものを作ったんすよ。〇ダの伝説みたいな」
俺はしっかり伏字になるようにマルダなんて言ったが、ネコおじには伝わったみたいで、あー! と声をあげた。
「じゃあ今回も、前みたいにRPG風にするかどうかってことだよね?」
とネコおじが俺とドズルさんに聞く。俺は、どうしますかね、とドズルさんへカメラ目線を向けた。ドズルさんは考え事をしていたみたいで空中で静止していたが、思いついたように急に動いた。
「前とは違う雰囲気にしよう。例えばさ、建物がいっぱいあるとか」
「ああ、街みたいにするとかですか?」
「いいね、それ」
この世界にはワールドエディットが入っている。建物をいくつか作ったら、無数に増殖することは可能そうだ。
「よし、建物の方はMENに任せた」
「まぁ、やってみますけど」
ドズルさんにこう言われる度、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ緊張するんだよな。
貴方の思っていた通りに出来るかどうかって。
案外やってみたらなんとかなるし、ドズルさんだって俺の作るものに酷評をつけたことはない。むしろ「すごいね、MEN」って言われて普通に嬉しい。
本当にすごいのは、俺や俺たちを纏めているドズルさんの方だけどな。
俺はドズルさんがまた褒めてくれるように、より一層力を入れてしまうのは、俺の中の永遠の秘密だ。
おしまい