第9章 番外編/濡れてないと…
『濡れてないと入らないわ』
高専に入って最初の夏休みまであと数日。
放課後だってのにまだ暑くて怠くなる気温に焼かれながら、校舎の外の掃除を終えて教室に戻った時だった。
グラウンドの掃除をしていた俺と傑とは別に、寧々と硝子の女子組は教室の掃除を担当していた。
「こんな暑い中、屋外とか無理」と逃げた硝子と、「2組に分かれた方が効率いいから」と提案した頭のキレる寧々。
俺だってこのクソ暑い中、グラウンドの掃除なんてやりたくなかったけど、寧々に負担が掛かるくらいなら喜んで引き受けてやる。
その勢いをそのままに傑を連れて教室を飛び出して、寧々の為に完璧に掃除をこなして戻ってきた…っていうのに
『濡れてないと痛くて入らない』
廊下に漏れてくる声は確かに寧々の声。
教室の中から聞こえてくる好きな子の声を聞き間違えるはずがない。
そして「濡れてないと入らない」その言葉も聞き間違えではないことが確定した。
「傑、ストップ」
教室に入ろうとしていた傑の前に腕を伸ばして、俺は寧々の言葉の意図を見極めようとした。
分かってるけどな、ちょっとエッチな話題ってことは…!