私のバイト先は推しグルがよく来るかもしれない件について
第1章 おらおん?
私は、都会の一角にあるコンビニでアルバイトをしている。
上京を夢見て都会に来たのだが、とことんブラック会社で精神を病んで退職。親に「ビックになる」と言い張って実家を飛び出してきたもんだから帰るにも帰れず、私は安くはない賃金を払うために、こうして夜中のバイト店員としてコンビニで働いていたのだ。
それでも最近はドズル社という動画を発見してどハマりし、仕事帰りは彼らのゲーム実況で笑いや癒しを頂いて眠りにつくという、昼夜逆転生活を送っていた。
私は絵も描けないしお金もギリギリだからスパチャも送れないけれど、いつか「ビック」になったら……という新たな夢を抱きながら、今日も夜のコンビニでぼーっと店員をやっていたのである。
そこにやってきたのは、二人の若い男性。
「ねぇねぇ、おんりー」
「今はその名前は……」
え、おんりー?
どこかで聞いたことのあるような声に私は思わず出入口を振り向く。そこには思ったよりも背の高い二人の男性が、コンビニに入ってきたところが目視出来た。
二人はすぐに商品棚の奥へと姿を消したが、私が振り向いた瞬間、一人はにこやかに笑みを返してくれて、もう一人は無表情で会釈だけしてくれたように見えた。まさか、おらふくんとおんりーちゃんなのでは……? 解釈一致過ぎて息が止まりそう。
とはいえ、まさかドズル社のメンバーさんがこんなコンビニ来るはずがないと冷静さが私に囁いた。いや、でもこのコンビニ、思いっ切り都会の中にあるんだよね。
そんなことはあるかもなんて思ったことはあったけれども、まさか実際に出会うとは思わないじゃん? 私は夢でも見ているんだろうか。
とはいえ、彼らが本当におらふくんとおんりーちゃんなのかはそれ以上確かめる方法もなく。
「ありがとうございました〜」
飲み物を買って行った二人に定型文を言ってコンビニから出ていくのを見送った。