第8章 TNTになった俺と傷つかない少女8
「それで、本題だ」悪役博士の口調が重々しく開かれる。「君は……XX番を私に返す気はあるのかね?」
俺は答えなかった。だが、心は決まっていた。
悪役博士はしばらくは笑みを浮かべていたが、俺が何も喋らないことに徐々に苛立ちを見せ始めた。それから急に、片手を上げると、俺を囲う武装したやつらが、一斉に銃口を向けた。
俺はこの銃弾を受けたら爆発するだろうが、同時に死ぬかもしれない。俺はぐっと拳を握った。
「これでも、口を割る気はないかね?」悪役博士が嫌味ったらしく訊ねてきた。「君は銃弾の衝撃で爆発を起こすだろう。私たちは爆発に対する防御策があるが……君はどうかね?」
勝ち誇ったかのようにこちらに笑いかける悪役博士。あいつの顔を見ていると、余計話す気が失せる。まぁ、元々話す気もないんだが。
「んなのやってみないと分からないだろうがぁ!」
俺は走り出した。
俺の体はデカいからか恰好の的だ。耳のそばで銃弾が通り過ぎ、ズボンの裾を貫通し、挙句の果てには左肩に命中して爆発。凄まじい破裂音が耳を劈(つんざ)いたがそれを敢えて勢いにして思い切り右の拳を振るった。
「うっ……!」
よろける悪役博士。俺はもう一発食らわせてやろうと拳を引いた時だった。
「待て!」悪役博士は、懐から銃を取り出したのだ。「この距離なら確実に死ぬぞ」
俺が悪役博士の間合いに詰め寄ったおかげで周りの銃撃は止んではいたが、第二のピンチに俺はたじろいだ。だが、迷っている暇はなかった。
「知るかよ!」
こういう時は攻撃あるのみ! 俺はいつだってそうしてきただろ?! 攻撃力に全振りだ!
俺が動き出した瞬間、ダンッと音が響いた。俺は避けるつもりで姿勢を低くしたが、そのわずかに、小さな足を見つけて息を飲んだ。
「ミウ!!!!」
それは一瞬だった。
飛び出してきたミウが俺の前に立ちはだかり、悪役博士が放った銃弾を全身で受け止めた。ミウの小さな悲鳴。俺はすぐに両腕を広げ、銃弾の勢いで俺に向かって吹き飛んできたミウを受け止める。あとはいつも通り、俺が爆発するだけだ。