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TNTになった俺と傷つかない少女

第5章 TNTになった俺と傷つかない少女5


 制止した時には、もう遅かった。
「動くな!」
 という男の声。俺はとっさに両手を上げた。緊張した空気の中、草むらから出てくる誰かを待った。
「……なんだ、人間か」
 草むらから出てきたのは、武装した男の人間だった。俺のこの見た目を人間と判断出来るならそれでいいのだが。
「誰なの……?」
 ミウは俺の後ろから顔だけ出して向かい合う男を見上げた。男は慌てて手にしていた銃口を向けたが、なんだ、子どもかとそれを下ろした。
「私は、ここを巡回に来た者だ。最近怪しいものを見たと聞いたからな」
 と男は銃を肩に背負いながら言った。俺は、と答えるよりも早く、ミウが無邪気そうにこう言った。
「あのね、あたしはミウだよ!」
「ミウ……?」
 ミウが名乗った瞬間、男の顔が曇った。
「男よ、その女の子から離れるべきだ」
「はぁ?」
 思わず出た言葉。初対面で絶対言ってはいけないが、この状況は理解出来なさ過ぎる。
「一体どういう……」
「悪いことは言わない! その女の子は悪魔なんだ!」
「悪、魔……?」
 俺が困惑して動けないでいる内に、男は俺の手を引っ張ろうとした。男の顔は怯えている。だが、人の断りもなく手を引っ張ることはしなくてもいいでしょうがよ!
「嫌だ!」ミウが背中から抱きついた。「あたし、メンから離れたくない!」
「おい、急に飛びついたら……」
 シュッ……!
 さすがに三度目となれば俺も慣れてきたもので、目の前の男を勢いよく突き飛ばして横へ飛びすさんだ。
 ミウは平気かもしれないが、あの男は無事ではないかもしれない。俺は出来るだけ二人から転がるように離れた。直後、俺は爆発した。
 今回は地面にへばりついていたから吹き飛びはしなかったが、周りの地形が俺を中心に凹んで飛んできた石とかが痛い。俺はなんとか元の位置まで戻り、大丈夫かと問いかけた。
「ひ、ひぃ……!」男は、そこで尻もちをついていた。「ば、化け物が二人もいるなんて聞いていないぞ……!」
 それから男は慌てたように地面を蹴りなんとか立ち上がると、瞬く間にこの場から走り去ってしまった。
「あのおじさん、なんだったの?」
 ただ一人、何も知らないミウだけが、きょとんとしていた。
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