第10章 匂いを嗅ぐ理由
「ただそれだけだ。
おい、俺の質問に答えろ。」
ミケは動揺を隠すかのように早口に言う。
アンは少し顔を綻ばせた後、
「今日のエルヴィン団長の
幸せそうな顔を見ていたら、
素直にエルヴィン団長の恋を
応援したいと思いました。」
と、明瞭な口調で言った。
「だからもう、エルヴィン団長に
執着する気はないです。」
アンはミケの顔を覗き込む。
「……ミケさんは、
これからどうするんですか?」
ミケはアンの発言を受け、
思わず頬を緩めると
「………そうだな。
それならそろそろ、両想いになれるように
俺も努力でもしてみるか。」
そう言って、優しくアンを抱き寄せた。
「お前はどうするんだ?」
アンはその問いかけに、
「努力してくれるなら、ミケさんと
身体以外の関係も持ちたいです。」
と、笑顔でミケの背中に手を回した。