第7章 ミケの思惑
「……エルヴィン団長の好きな人って、
どんな人なんですか……?」
ミケの胸に顔を埋めたまま、
呟くように質問を投げかけるアンに
「俺も会ったことがないから知らない。
だが、小さな食堂で働いている、
料理が上手くて偏見を持たない女
だという話は聞いた。」
と、ミケは相変わらずの落ち着いた声で答える。
「エルヴィン団長が好きになるくらいだから、
相当素敵な人なんでしょうね……」
意識せずともため息が漏れる。
「会ってみたいと思うか?」
ミケからの突拍子もない提案に、
アンは咄嗟に顔を上げた。
「俺がエルヴィンに頼めば
連れて行ってくれるだろう。
お前は料理人なんだから、
料理の勉強をしたいという態で
着いて来ればいい。
俺が上手く話をつけてやる。
ライバルがどんな奴か
知っておいて損はないだろう。」