第5章 入れ込んでいる相手
それからアンは週に二、三回
ミケの部屋を訪れ、
ミケに存分に匂いを嗅がれながら、
これ以上ないのではないか
と思えるほどの悦楽に浸らせてもらい、
それが終わった後は
一つだけエルヴィンのことを教えて貰う。
そんな繰り返しの日々を送っていた。
そのお蔭で、
エルヴィンが食堂に訪れた時には
自ら話題を振って
話しかけることができるようになった。
ずっと遠くから見ているだけの存在だった
エルヴィンの隣で話ができる。
こんなに嬉しいことがあっていいのか……
これもミケが私にとって
好条件な提案をしてくれたお蔭だ。
……と言うより、
私にとって好条件なだけであって
ミケにとってはどうなのだろうか。
ただ匂いを嗅がれるだけなのに、
私は快楽も情報も得ることが出来る。
不平等にしか思えないが、
ミケがそれでいいと言ってくれるから
それに甘えていた。