第3章 ミケの提案
「あの……
もう十分嗅いだんじゃないんですか……?」
情事を終えても尚、
アンの頬の辺りの匂いを嗅ぎ続けるミケに
声を掛ける。
「お前は十分満足したんだろ?
それなら匂いくらい嗅がせてくれても
いいだろう。」
ミケは平然とそう言うと、
再びスンスンと鼻を動かす。
ミケの呼吸音を耳元で感じながら、
アンは思わず小さくため息を漏らした。
「……後悔してるのか?」
唐突な問いかけに、アンは目を丸くする。
後悔も何も、この部屋に入った時点で、
これ以外の選択肢は初めからなかったのでは……
そう思いながらも、これは自分の
淫欲の強さが招いた事態であることは
明らかだった。
アンは軽く目を閉じると
「……いえ。
結局流されたのは私ですから。」
そう言って、小さく息を吐く。