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真珠の涙

第8章 1月


夏油side

あの日から風海とは会っていない。顔を見てしまったら決意が揺らいでしまいそうだったから、外泊してくれてちょうどよかった。
彼女のいない生活はどんな感じだったかを思い出すのに時間がかかる。自分の部屋も落ち着かない。彼女の香りがないと、眠った気がしない。

全てが彼女中心になっていたことに気付かされた。

今日は悟と風海が帰ってくる日だ。外にいたら見つけてくれるかもしれない。見つけてもらってどうする?風海はもう、私のことなんて何とも思っていないかもしれない。だけど、花のような笑顔を向けてほしい。

グラウンドに腰掛け、彼女が怪我した日を思い出す。悟も別れを告げられたらしい。3人でいたいと。
だけど、自分で守ると決めたのに放棄するのかと怒りを露わにしてきた。私だって、守ってやりたいさ。だが、それができなかった。より強固に守ってくれる環境が必要だ。彼女が大切だから。

感傷に浸っていると、後ろから能天気な声が聞こえる。
「夏油くぅ〜ん♡」

あぁまたこの人か。悟とも話したが、身近に手を出すとよくないのはよくわかってる。よく話をすることが増えて、馴れ馴れしくなってきた。隣に座って話し始める。
女性の話はこんなにつまらないものだったか。風海と出会ってから、他の女性に触れていない。話がつまらないもとは思ったこともない。いつも愛らしい笑顔で報告してくれる。
そんな彼女を思い浮かべると、自然と笑顔が溢れた。


『傑さん!』


愛しい子の声。
でもこんな状況、傷つかないわけない。けど、まだ私のことを好いてくれているかも分からない。
隣の女は嬉しそうにしているが、勘違いするなよ?私は今でも風海が好きだ。

傑「おかえり風海。儀式はうまくいった?」

笑顔で答えようとする。
すごく気まずそうな表情。そうだよな。
…でも君は悟と幸せになるべきなんだ…
私では力不足だった。
だから離れて陰で君を守る、そう決めたのに…
君のその悲しそうな顔を見ていられない。


『はい…いつもとは違う儀式になりました。あの…』

五条家や御三家の会合にも参加したのだろう?
悟の婚約者としての位置付けがハッキリしたんじゃないか。もう私に構わないでくれ。
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