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真珠の涙

第8章 1月



思わず部屋を飛び出した。
走ってグラウンドへ向かうと、大好きな背中と隣には黒いスーツを着た女性。たぶん補助監督さんだろう。
ここまで勢いで来たけど、なんて声をかけるつもりだったの?
けど、こんなの見てられない!

『傑さん!』

すると2人で振り返った。
女性は勝ち誇ったような笑顔で、傑さんの腕に巻き付いている。
傑さんは無表情だった。

傑「おかえり風海。儀式はうまくいった?」

いつもみたいに微笑んではくれないんだ。
本当に嫌われちゃったのかな。
目は合わせられない。下を向いたまま答える。

『はい…いつもとは違う儀式になりました。あの…』

補助監督さんがため息をつきながら
「ねぇ、用がないならもういいでしょ?見て分からない?今いい雰囲気なの。」
そして、ね?というように笑いながら傑さんを見上げる。傑さんの大きな手で補助監督さんの腰を引き寄せる。
私の大好きな手でそんなことしないで。

傑「あぁ…悟に伝えて。そちらには行けないと。」

泣いたらダメと思うのに、目に涙が溜まっていく。必死に零さないようにするのに、これは時間の問題かも。

『どうしてですか?お話したいのに…』

そう、たくさん話したいことがあるの。いつもみたいに優しく微笑みながら聞いて?頭を撫でながら聞いてよ。

傑「君もしつこいなぁ…今は無理だ。…まぁ今後も聞く気はないけど。」

その言葉にいよいよ涙が溢れた。

『ひどい!ちゃんと話を聞いて欲しいだけなのに!
もう…傑さんなんて嫌い!』

泣き顔を見られたくなくて、振り返って走り出した。
言ってから後悔した。
嫌いなんて思ったことないのに。
思わず口から出た言葉。

急いで部屋へ戻ると、悟さんがベッドに横たわりながらくつろいでいる。私の泣いている顔を見て驚いていた。

悟「なに泣いてんの?傑に泣かされた?」

と優しく言われて、さらに涙が溢れた。
事情を説明して、嫌いって言ってしまったことを後悔していることを伝えた。

悟「あぁ〜それは大ダメージだなw 今頃放心状態だぞ、アイツ。」
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