第6章 年末
「あぁ…彼氏だった?だったら逆ナンの子相手にしてないで、ちゃんと彼女のこと捕まえとけよ。
怯えちゃって可哀想に…。どうする?俺と来る?」
傑「君には関係のないことだ。彼女は行かせない。」
いつも優しくて穏やかな傑さんがすっごく怒ってる。こんな傑さん初めて見た。
…そんなに怒らないで。私のせいでごめんなさい…。
いつもは抱きしめてくれるのに、背中に手すら当ててくれない。悲しくなってきて、ぎゅっと抱きついて
『傑さん、ごめんなさい。怒らないで?』
謝ってもしょうがないことはわかってる。だけど、いつもの優しい傑さんに戻ってほしい。
「あぁ〜洗脳されてる感じ?こんな可愛い子に…可哀想。彼氏さん、よくないよ?そーゆーの。俺、優しくするよ?」
手を差し伸べられた。
優しくするとか関係ないから。私は傑さんがいいの。
傑「…風海、何か言うことある?」
ハッとした。
私がちゃんと断るのを待ってたんだと。ごめんなさい…
『すみません。私、彼と予定があるので。それに…洗脳なんかじゃないです。彼が好きなの。』
と言いながら傑さんを見上げたら、今度は優しく微笑んでくれる。
頭を撫でられ、いつもの傑さんに戻ってくれた。
よかった…
「ふぅ〜ん。まぁいいや!
きっとまた会える♡じゃあね♡」
その人は私の手を取ってキスをした。
周りに人が集まっていて “きゃー♡”とか“おぉ〜”と歓声があがる。
まるで王子様のようにお辞儀をして去っていった。
そんなことされたことなかったから、びっくりした。
思考停止。
傑さんに手を引かれて、電車のドアが締まる直前に乗り込んだ。
どうしよう。
ちょっとドキドキしちゃった。今もぽ〜っとしてる。