第21章 料理を二度と作らないと決めた日(ノア・愛空・玲王)【後編】
ノエル・ノア
「待ってくれ…」
珍しいノエルの切羽詰まった声に思わず振り向いてしまった。ノエルは今まで見たことが無い何処か苦しげ表情をしていて、ゆっくり私の方に来ると手を握ってきた。その手は少しだけ震えている。
「悪かった…」
『別に謝らなくていいんだよ…?私がずっとノエルに我慢させて食べさせてた訳だし』
そう言うとノエルは眉間に皺を寄せてから「違う」と言うので私は数回瞬きをする。
「我慢して食ってた訳じゃねぇ…。ただ、🌸が毎回料理失敗したらすげぇ傷ついた顔してただろ。無理に作らなくても良いって言っても、お前なら『無理してない』って言うだろうから。だから…」
つまりノエルは私の為にあんな事を言ったのだろうかと目を見開く。
「俺が、お前の飯を食いてぇって言ったから無理に作ってると思って」
『そんなこと無いよ…。私、ノエルが食べてくれるの凄く嬉しくて』
そう私が言うとノエルは申し訳なさそうな表情をして俯いてしまう。この人は優しいけど不器用な所があるみたいだと思えば笑えてしまう。言葉選びが下手だなぁと思いながらノエルの頬に触れた。
『私の事を思ってくれてありがとう。でもね、ノエルが食べてくれるの嬉しいから無理なんてしないよ』「悪かった」
『うん』
「🌸の飯、食いたいからまた作って欲しい」
『作るよ』
ノエルは小さく笑いながら私の手を優しく握ってくれた。