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《赤井夢》Happiness{R18}

第30章 救済




「早く行くぞ。」


グッと肩を抱かれて歩き出し
林を抜けて水族館を出て少し歩くと
白のラインが入った赤色のスポーツカーが止まっていて…


扉を開けてもらい助手席に座ってシートベルトをつけると
運転席に乗り込んだ赤井さんはすぐに車を発進させた。




私は帰り道の車の中で
最期に笑いかけてくれたあの女性の笑顔を思い出していた。



そして、灰原さんから聞いたあの人が言っていたという
私達を助けたいって言葉…



彼女が亡くなってしまったという悲しい事実が再び私を襲い
止まっていた涙がまた溢れてきた。




「美緒?どうした…?」

『っ、すみません…あの女の人がクレーン車で…
子供達と私を…助けるために…っ…』



そこまで話したところで私がなぜあの女性と知り合いだったのか…赤井さんが驚いているのが伝わってきて
私は知り合った経緯を泣きながら説明した。



『あの女性が組織の人で
悪い人なのは分かってますけど…
死んで欲しくなんか……なかった…っ…』




私は…記憶がない時の彼女のことしか知らないから…

子供達と楽しく遊ぶ姿や私に微笑みかけてくれた
優しい笑顔が脳裏に焼き付いてる。



赤井さんは運転しながら黙ったまま私の話を聞いてくれて
信号で車が止まる度に私の頭を撫でてくれた。



しばらく車に揺られていると
赤井さんは車のエンジンを切っており
いつの間にか工藤邸に到着していた。



運転席を降りた赤井さんは助手席の方へ回ってきて
私のことを支えながら一緒に歩いてくれて…
そんな彼の優しさに目の奥がツンとなり、涙はなかなか止まってくれなかった。




玄関から家の中に入り、
赤井さんは私を風呂場まで連れてきた。




「額の出血は止まったな…
先にシャワー浴びてこい。手当ては後でしてやる。」


『でも…赤井さんも手当しないと…』


「俺も後でお前にしてもらう。
着替えはそこの引き出しにしまっておいたからな。」


『ありがとう…ございます…』



赤井さんもボロボロで疲れているはずなのに
彼の顔も、声も、私の頭を撫でる手つきも全部が優しくて…


私を気遣ってくれる赤井さんの気持ちが嬉しい…。



脱衣所から出て行こうと私に背を向けた
赤井さんの背中にギュッと抱きついた。







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