第2章 プロローグ
1)
自分がSubだと理解(わか)ってから、身体を重ねることを含めたPlayをしたのは数回。
体調を保つためとはいえ信頼関係のないPlayでは意味がないのはわかっているのに、それでも…
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『朔、Lick(リック/舐めろ)』
強いGlare(グレア)にあてられた俺は、朦朧とする意識の中で目の前の男の下半身に顔を埋め、必死にその真ん中を咥え込む。
『たまんねぇ……』
そう呟いた男のそれは口に収まりきれなくなるほどにカタチを変え、俺の呼吸を妨げる。
しばらく後、それが俺の口から抜き去られ、ようやく新鮮な空気を身体いっぱいに吸い込んだ。
『朔、Crawl(クロール/四つん這いになれ)』
まだ息の上がる俺に、男は矢継ぎ早にそう言い放つ。
抗いたいのにそのCommandに身体が、本能が反応してしまう……
四つん這いになった俺の腰を掴むと、男はさっきまで俺が咥えていた自身のものを双丘の隙間に数回擦りつけ、ぐっと力を込めた。
俺のナカに侵入してくる熱いカタマリ…
何度も俺のナカを行き来しては最奥を抉るように突き上げて、幾度となく吐き出される白濁と恍惚をまとった吐息。
その感覚を同じように共有したいのに、男は自分が快楽を貪るのに夢中で俺にはCommandを出してくれなくて。
俺は昇り詰められないもどかしさに、強張る身体を小さく震わせていた。
どのくらいそんな状態が続いただろう…
気の済むまで俺に白濁を注いだ男は、そんな俺の様子に気づいて嘲笑(あざわら)う。
『っ、ははっ、おまえ自分でイけないんだったな…朔……Cum(カム/イけ)』
そのCommandに俺は大きく身体を震わせて、ようやく熱を吐き出した。
ただそれはDomが満足するためだけのPlayで、Subの俺が満たされることはなかった。