第35章 七海健人 夫婦交換しよ?-参-
「静先輩から聞いたよね…?」
「…ああ。…アレだろ?」
陽はわたしと目を合わせようとしなかった。
なんで引き受けたのか聞いてくれても良かったのにそれさえも避けられている気がして、不満の口をぐっとおさえる。
「じゃあさ、もう一泊あるんだし続行しない?」
「えっ…?」
「そのつもりだったんだろ?俺に黙ってさ…。
つうか絶倫相手にしてるとかなまえ、性欲強くない?」
「っ、もう知らない…!」
最後の日くらい旅行先で求められるんじゃないかと淡い期待を抱いていた。
けれど求めたのは静先輩の体で、
わたしは性欲が強いと無神経な言葉を浴びせてきた。
「…もうやだ…。
こんな風になりたかったわけじゃないのに…」
夫婦交換の目的を失った気がする。
健人さんとのセックスは夢中になれるけど、本当にセックスしたいのは陽ただひとり。
セックスで快楽とか性欲を発散させたいわけじゃないのに性欲が強いと言われる始末。
泣いたら余計にみじめになりそうな気がして、
ひとりで観光通りを歩きながら
写真を撮ろうと足を止めるもシャッターが押せない。
「なまえさん…!」