第8章 夏と恋とひんやり甘味
それからもせっせと料理を作ってはお出しして家康様に召し上がってもらった。珍しい料理にも果敢に挑戦してくださり、美味しいと舌を打って楽しんでくれたようだ。
そして箸を置いてごちそうさまと言った家康様は立ち上がると家臣達がお会計を済ませた。
「いやー実にどれも美味しくて手や箸が止まりませんでしたな。しーちきんもまよねーずも気に入りましたぞい。」
家康様と家臣達は何度もお礼を言って上機嫌に帰って行った。
実はお帰りになる前に家康様に紙にお名前を書いてもらったのだ。私のいた時代では有名人は色紙にサインを書いてお店に飾っているのだ。なのでお越しくださったしるしに名前を書いてもらった。そして、お店に飾ることにした。
「またのご来店、お待ちしております。いつでもお店を開けますのでその時は事前にお手紙くださると嬉しいです。」
私の言葉に家康様は頷いて馬に跨って行った。
家康様が来てくださっただけでも嬉しいのにこんなにしっかり会話したのがいつぶりくらいだようかと私は胸を躍らせていた。