第2章 おんりーチャン目線
俺も、緊張してるかも。
そう思いながら歩いていると、グループチャットはMENが近くまで迎えに行く、という話になっていた。俺が迷子になると思ったんだろうか、と考えたが、なぜそれでMENが来るのかもさっぱり検討がつかない。
〈もう少しで着くと思うけど〉
今近くのビルまで来てる、とメッセージを送ると、じゃあそこの路地裏で落ち合えるな、とMENが言ってきたので了解とだけ返信をした。
お互いの顔は知ってるから見間違えるはずはないと思うけど、この街は人が多いし見落とすこともあるかも、なんて考えながら路地裏にやってくると、そこに体格のいい男が向こうからやって来た。
MENは動画で顔を出しているが、さすがにそこにいる彼はマスクをつけていた。髪型も歩き方もMENっぽいが、彼がMENなのかは分からない。
すると、向かい合う彼が軽く片手を上げた。
「ウッス」
「……ウッス」
初対面……いや、会話はしたことはあるのだが、それでも最初の挨拶がそれとはなんなんだ。
俺は反射的にそう返事をしなが、MENらしき人物は目の前で立ち止まった。
そこで俺は気がついた。表情は笑っているが、どこかよそよそしい。もしかして、俺がおんりーなのか自信はないのかもしれない。
そう察した俺は、おんりーならなんて言うのか考えながら、いつも通りにこう訊ねてみた。
「……あの違法建築してる人ですか」
すると、途端に向かい合う男が噴き出すかのうに笑った。その笑い方は間違いなくMENだ。俺はその笑い声にどこか安堵しながら、MENの言葉を待った。
「その通りよ! この俺が、地下に火薬を大量に仕舞える倉庫を作った違法建築士、MENだ!」
誰が聞くかも分からないのに、けらりと笑いながらそう答えたMENは、本当にMENらしくて俺も思わずつられそうになりながら俯いた。
「ああ、そうですか」