第1章 おおはらMEN視点
〈みんなもう着いたの?〉
それは、初めてドズル社メンバー全員がリアルに会う日だった。
おんりーが遅れている訳でもなかったのに、みんな楽しみだったのか緊張していたのか、早めに集合場所に着いていたのだ。
メッセージを見る限り、もうすぐそこまで来ているらしい。
「おんりー迷子かな?」
なんておらふくんが言うもんだから、自分そこまで迎えに行くっスよ、と軽受け合いし、みんなと一旦離れた。
おんりーが発信してるメッセージから、恐らくこの辺りのはず、と当たりをつけて行ってみる。
お互い顔写真は送りあっていたが、俺だって緊張はする。
もし、おんりーが女だったら、なんて信じられないことを想定しながら、落ち合う路地裏へ向かった時、そこにやつはいた。
小柄な男だった。
俺よりは幼そうな顔をしている、眼鏡を掛けた少年。
こいつか?
他に誰もいないからこいつなんだろうが、確かなことは分からない。分からないまま俺たちは徐々に距離を詰め、とにかく何か喋ろうと思った。
「ウッス」
「ウッス」
我ながらなんて挨拶をしたんだろうと思った。
だが、すぐに返事をしてきたところ、こいつに間違いないとすぐに分かった。それに、画面越しでしか聞いていなかった声は、おんりーのはずだ。
だが、本当にこいつか? という警戒心はわずかにはあった。たまたまウッス、と返事してきた全くの知らない人物だったら、恥ずかしい状況だ。
「……あの違法建築してる人ですか」
「は?」
思わず返してしまった一言。こんな冷ややかな質問をしてくるのはあのおんりーしかいない。そう思うとなんだか可笑しくなって、俺はついに噴き出した。
「ぷはっ……! その通りよ!」俺はノリのまんま話し続けた。「この俺が、地下に火薬を大量に仕舞える倉庫を作った違法建築士、MENだ!」
我ながらなんて発言なんだろうと俺は思った。そして向かい合うおんりーは、ぽかんと口を開けたかと思えば、すぐに目を伏せてこう言った。
「ああ、そうですか」