第3章 下っ端の犬
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試合が始まると今まで面白半分で見に来ていた隊士や土方、近藤までもが目を見開いた
目の前に広がる光景はべしゃりと倒れる隊士とその隊士に手を貸し立たせるしろなの姿
「試合終了、だ」
『ありがとうございましたー』
まさに瞬殺。
その様子を見て沖田はどっこらせ、と呟きながら立ち上がりによりと笑みを見せる
「少しは楽しめそうだねィ」
『怖い怖い、お手柔らかに』
あたりが唖然とする中、本試合が始まった
勝負が始まると両者一歩も引かずに打ち合いが続き、周りは2人の姿をただただ目で追っていた
『そろそろ負けてよ沖田くーん』
「そう簡単には負けらんねえや。こっちもメンツかかってるんで、ね!」
ほんの一瞬、その一瞬を沖田は見逃さずしろなの剣に隙が出来たところを突き空を切って頬を掠った
『うお、』
頬に感じた風に気を取られバランスを崩し尻餅を突いたしろなはポカンとしていたがあっけらかんと笑い、竹刀を離す
『参った!沖田くん強いわ、もう絶対やりたくねえ』
そして勝負がついたのであった
「アンタもなかなかの太刀筋だ、どっかで修行でもしてたんですかィ?」
『んーちょっとね』
気付くとしろなの頬からは血が伝い手で拭うとそのままにしようとした姿を見て近藤が手当してもらってきなさい!と女中の元へと向かわせると土方に向かい問い掛ける
「どうだトシ!まあ最初から落とす気はなかったんだと思うがな」
「さあな」
「落とす気以上に出て行かせる気も無かったと思いやすぜ。着物まで買ってやったんだから」
「うるせえぞ総悟。腕が鈍ったみたいだから素振りでもしてろ」
そういうと土方は煙草に火をつけた