第1章 雪は降り積もる
おーおー、お熱いこって。
その熱発散する余裕があったら春を呼べ!畑の作物を育てさせろ!
そんな事を考えながらカップルをチラ見した女、しろなは溜め息混じりの白い息を細く吐き出した
ここに住み着いてると聞いて飛んできたは良いものの手懸かりはゼロ。覚悟は出来てたけどここまで見付からないとは…。まさか悪どい商売人に内蔵でも売られたんじゃあないかな。都会ってすぐそこに悪者が潜んでるって聞いたからな
そんな思考を巡らせたしろなは『ぶあっくしょん!』と大きなくしゃみを一つするともう一度溜め息を吐き出した
ここまで探しても見付からないってことはまさかもう天国へ階段を上っちまったのか!それならそれでいいや!天使様兄上様!パトラッシュを引き連れて早く温かいところに連れていってくださいィイイ!私はもう限界ですゥウウ!!
揚げ句の果てに神頼みをし始めたしろなであったが、ふと気付くと人混みを抜け、塀に囲まれた建物の通りに出ていた
空腹と疲労で体力が底をついたしろなは目に入った壁に背を持たれ、少しでも暖を取ろうと膝を抱え込み顔を埋める
『兄上ー、降ってこいー…』
その声はポツンと取り残され誰にも返される訳なく雪に埋もれて行った
雪はまだ降り続く