第3章 追憶
ーーデータが破損…?ーー
記憶をデータとして保存するだけだった筈。
それがどういう事か、私は今
何も聞こえない
何も見えない
何も感じられない
五感という全ての機能が失われた
真っ暗な場所に居る
3章 ー追憶ー
真っ暗な暗闇の中、ただ目を閉じて立っている
腕を伸ばして周りに触れようとするが、何かに当たって止まらない限り、当たったことにさえ理解できない状態だ。
思考も普段よりずっと使い物にならない。
せめて、何か情報が欲しい。
人差し指を立て、誰かに気付いて貰える事に期待しながら、腕を動かした。
見えない事で、文字を書いてもズレているかもしれない。
感覚が無いせいで、抑伝えたい事が書けているのかもわからない。
声がないから、叫べもしない。
聞こえないことで、何が起きているのかも
全てが、
わからなかった。
夢中でただ、“help”そう書いていたつもりで居た。
すると何時間たったのか、何回書いたか分からなくなった頃、私の手が誰かの手で止まった。
私の手を握るとそれは、動き出した。
感覚の無い私の腕では何を書かれても伝わって来なかった。
大きく肩まで動かして貰って漸く伝わった。
“どうしたの”
そこから私の意思が伝えられるようになった。
“データ” “はそん” “ごかん” “ない”
しかし、それを伝えた瞬間
私の手からその手は離れて行った。
“見放された”
そんな風に感じた。
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