第8章 ちょっとイジわる(後編)
「はぁはぁはぁ…」
「ルア?大丈夫?」
リヒターに引き続きフォルトにも
イカされまくり力が入らない。
「結界ちゃんと張ってたから安心して。
あんな色っぽい声、他の誰にも
聞かせたくないからね」
「ちょっとイジわる」
涙目で睨んでくるがそれすら
愛おしい。
「だってルアがかわいすぎるのが
悪い。これでもまだ我慢してるんだよ?
そう言われると何も言い返せなくて
プイと顔だけ背ける。
怒ってるわけでなく
ただ恥ずかしかった。
それもわかっててフォルトは
濡れたところを甲斐甲斐しく
拭いてくれる。
「後ろの方、気持ち良かった?」
「…最初、痛かったけど…後は
変な感じで…」
「怒ってる?俺の事嫌いになった?」
「……フォルトはズルい。嫌いに
なるわけないのに…」
「よく聞こえない」
絶対聞こえてるだろうにニコニコと
ルシアリアの言葉を待っている。
その姿は尻尾を振っている
犬のようだ。
その期待を裏切れるはずもなく。
「…大好き」
何だか悔しくてさっきより小さい声で
言ったのにしっかり聞こえたようで
フォルトは満足した笑顔でルシアリアを
抱き締めた。
そして抱きしめ合ったまま
朝まで眠りについた。
朝、夜が明けて朝食に案内されて
食べ終わった頃、バァンと音を立てて
リヒターが部屋に入ってきた。
「話が、ついたぞ!」
「! リヒター!おはよう」
「おう!話がまとまって、和平条約を
結ぶ事が決まったぞ」
上手く話がまとまり興奮が収まらない
様子で耳と尻尾が出たままである。
「そうか!朝早くからご苦労だったな」
「人狼族は基本ジッとしてられないから
朝早く集めるのは簡単さ!
それに最後に後押ししてくれたのは
レクトだったんだ。あいつ今まで
和平には反対だったのにルシアリア
みたいな奴もいるなら人間も悪くない
って言ってな」
「なら、この和平条約の貢献者は
ルアだな。和平締結時に
人間側の承認としてルアも
同席してくれよ」
「いいの?うん!私でいいなら喜んで!」
こうしてトントンと話は決まり
ルシアリアが見守る中、人間と
人狼族の和平条約がここに
結ばれたのだった。