第6章 人狼族との出会い(前編)
人狼族の集落で人間と和平条約を
結ぶべきか言い合いになっていた。
「人間にへりくだるなんて真っ平
ごめんだ!」
「へりくだるわけではない。
和平だ。同等の立場になり、
交易を広げるだけだ」
言い合っているのは人狼族の頭首と
その息子のレクトであった。
「そんな都合良くいくわけないだろ!
兄貴もそう思うだろ?」
兄のリヒターは親子で言い合うのを
黙って聞いていたが意見を
求められ口を開く。
「俺は和平に賛成だ。このところ
去年雨が多かったせいで食料が
少なくなってきているし、
人間の作った品物はどれも
素晴らしい。それに…
人間も悪い奴ばかりではないぞ」
「そんなわけないだろ!
どうせ俺達を乱暴な獣としか
思ってないだろ!」
人間に冷たい態度ばかり取られてきた
レクトは和平などせず、
今までどおり過ごしたかった。
だか、頭首である父と次期頭首だと
言われている兄リヒターは
村の未来の事を考えると
人間との交流が必要となって
いることに気づいていた。
「レクトの気持ちもわかる。
でも俺は人間にもいい奴がいるのを
知っている。……そうだ!
俺と一緒に村に行って人間の様子を
見に行ってみよう!」
「はっ、バカかよ!誰が行くか!」
「知らないから恐いんだろ?」
「恐いわけないだろ!力は俺達
のが強いってわかってるだろ!」
「そうだな。わかった。
一緒に行ってみような」
「なんでそうなるんだよ!
って聞けよ!俺は行かねえよ」
文句を言う弟を引きずりリヒターは
近くにある村を目指した。