第5章 上書き
頭を撫でられ落ち着いてくると
フォルトが顔を覗き込んできた。
「というか、今回の騒動でも俺が危ない
なら助けに来なくていいとか
思ってただろ?」
「え、どうして…」
その場にいなかったのに
心を読まれてた事に驚く。
「ルアの事なら何でもわかるよ。
根っからのお人好しだからなぁ。
でもそれ、いらない心配。
俺、強くなったよ。
魔王だって倒したよ」
「……はい?」
突然、思わぬ爆弾発言に理解が追いつかない。
「村に帰って来る前、魔王討伐してきた。
大陸の端にあるこの村にはまだ情報が
来てないけど、それも時間の問題だろ」
「フォルトが?仲間と?」
「いや、俺一人で」
「一人で!?魔王ってそんなに弱かった?」
「いや、転移魔法とか妙な魔法をいろいろ
使うから手間取ったけど、なんとかなった」
ケロッと答えるフォルトに
驚きすぎて何も言えなくなる。
「…だから、ルアを俺に守らせて」
「…うん。…うん。今度何かあった時は
絶対フォルトを呼ぶね」
「そうして。というか、何もない事を
祈るよ。それに…何もなくてもルアが
呼んでくれたらすぐ駆けつける」
「うん。ありがとう」
込められるだけの想いを一緒に
お礼を伝えて抱きしめる。
この一時が幸せすぎて絶対に
手放したくないと思うフォルト。
ルシアリアは気付いてないが寝てる間に
悪夢を見せる魔物の気配が残っていた。
フォルトはその気配を魔法で追跡させている。
ルシアリアに危害が及ばないよう
必ず守る事を心に強く誓った。
次の日にはフォルトが魔王討伐を
果たした事がこの村まで伝わり
村を挙げてのお祭り騒ぎになったのだった。