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短編 フェアリーテイル

第14章 ジェラール 「会えないけれど」


楽園の塔に入ってきたばっかりの頃、私は彼に救われた。
何もしてないのに薄暗くて寒いところに連れてこられてとても怖かった。
隅で震えている時に彼は私の肩を叩いた。


「…お腹すいてない?」


硬そうなパンを半分私に見せる彼に救われた。
何も言わず無言な私の横に彼は座った。


「俺はジェラール・フェルナンデスだ。長くて覚えにくいって言われる。お前は?」


ニカッと笑いながら聞かれて私も少し微笑んで答える。


「……カナタ。カナタ・アマリリス。…特に、変わった名前じゃないけど…」


ジェラールは私の目を見て笑った。


「カナタか!良い名前だな」


そう言ってパンを齧っている。
それを見ていると私のお腹が鳴った。

恥ずかしくてお腹を抑えながら下を向くとジェラールは私の前にまたパンを差し出す。


「これ、お前のだよ。食べな」


微笑む彼の手からパンを受け取る。
そして食べながら私たちは自分たちがここに来る前の話をした。




少しして食べ終わると手を引かれる。


「…カナタ!俺と一緒に来い!ちょっとでも暖かいとこ行きてえだろ?」


楽しそうに走る彼に私も頷いてついていった。




それから毎日ジェラールと行動を共にした。

一緒に寝て、一緒にご飯を食べて、一緒に遊んで。
それだけで楽しかった。


私がこの塔に入って何年か後にはミリアーナやショウ、ウォーリーが来て、もっと騒がしくなった。

私は牢獄に来ても楽しいところがあるって皆に教えた。


それから、また数年。
赤毛の女の子が入ってきた。

ジェラールが声をかける。


「名前は?」


私もシモンと話していて2人の会話は聞いていなかったが何となく、ほんと私の思い込みか、赤毛の子はジェラールを輝いた目で見ていた。

胸騒ぎがして私は2人を見るのをやめた。



日が経つ事に2人の距離がどんどん近づいてるのが痛いくらい目に見えた。

見るのが嫌でいつものように2人を見ないようにしていると1人の見張りの男に声をかけられた。


「おい、そこのガキ。こっちに来い」



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