第12章 半年経ちました。
翔くんは、かなり大手の会社に勤めていて、収入も結構あったけど
僕はフリーのイラストレーター
収入は仕事がある時だけで、不定期な上にかなり少ない
いくら翔くんが僕の家に転がり込んで来たとは言え
生活費の殆どを、翔くんに頼るのは、いくら何でも申し訳なかった
「…ちゃんと何処かの出版社とかと契約出来たら良いんだけどなぁ…」
原稿にペンを走らせながら、溜め息をつく
「………」
ふと、松岡さんの顔が、浮かんで消える
(……そう言えば前に、松岡さんが口を利いて出版社に紹介してくれるって言ってたっけ……)
その時既に、松岡さんの愛人だった僕は
生活の全てを面倒見てもらっているのに、仕事まで用立てしてもらったのでは申し訳なさすぎると思い
松岡さんの申し出を断ったのだ
(……今更、そんなのお願いするのは、ダメだよね……)
そうは思っても、翔くんの為にちゃんと稼げるようになりたいし
…かと言って、もう二度と会わないって決めたのに
どんな顔して、仕事の紹介をしてくれなんて言って良いのか解らない
(……他にコネがあれば良いんだけど……何にもないからなぁ……)
僕は、ペンを置いて、大きな溜め息をついた