第12章 半年経ちました。
「じゃあ、行ってきまぁ〜す♪」
「はい、いってらっしゃい(笑)」
僕はいつも通り会社へ向かう翔くんを玄関で手を振りながら見送った
翔くんが、僕の部屋に越してきてから、もうすぐ半年が経つ
ただ広いばかりで
がらんとして生活感が無く、寂しかった僕の部屋は
翔くんが持ち込んだ荷物で埋め尽くされて
今では物で溢れ返り、心地よい雑然とした空気で満たされていた
だから
翔くんが仕事に行って、独りで部屋に残されても
僕は、ちっとも寂しくなんか無かった
以前の僕は、部屋で独りになるのが寂しくて
時には何も手に着かず、一日中膝を抱えて泣いていた時もあったのに
今は、翔くんが持ってきた沢山の物達に囲まれて
…翔くんの、暖かい匂いに包まれて
一日中幸せな気持ちでお留守番が出来るようになっていた
「さてと、今日中に仕上げないとな」
僕は、挿し絵の原稿の前に座って腕捲りをした