第6章 in フラれちまった悲しみに(最早“in”は不要)
翔「………」
智くんは何も言わない俺を見て潤んだ瞳を揺らしながら、もう一度小さな声で
「行ってくるね」
と言って部屋を出て行った
俺は結局、黙って何も言わないまま、部屋を出て行く智くんの背中を見送った
翔「…………行っちゃった」
(自分で行かせた癖に……情けねぇ)
俺は溢れ出した涙を拭いながら、ホテルのレストランに電話を掛けた
それからディナーの予約のキャンセルを告げて、電話を切った
翔「………はぁ」
携帯電話を握り締めたまま、ベッドの上に仰向けに転がる
翔「…せっかくだから、泊まって行こうかなぁ」
(…もしかしたら、本当に…智くんが戻って来るかも知れないし…)
翔「……んな訳ないかなぁ」
俺はベッドに寝ころんで天井を見ながら、さっきまでの智くんとの甘い一時を思い出していた
翔「………俺、本気で一生チェリーかもなぁ(泣)」
一人ぼっちになったホテルの部屋に
俺の派手な溜め息が響いた