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OH CHERRY!─山コンビ─

第4章 in ボード(白鳥じゃないよ)





翔「………次は、俺の番かな」


智くんの華奢な体を抱き締めたまま、俺はやっとの思いで声を発した


智「…翔くんの、番って?」


何の抵抗もせず、俺に抱かれたままの智くんが言う

俺は、仄かに甘い香りが漂うその細い首筋に鼻先を押し付けて

己が、本当は一番語りたくない、恥ずかしい過去の話を語り始めた


翔「……高校生の頃に付き合ってた彼女とさ……初めてえっちするってなった時にさ……


俺、異様に緊張してて、訳わかんなくなっちゃって


彼女に“一回練習でさきっちょだけ入れさせて!”とか、訳わかんない事言っちゃって…


んで、彼女がめちゃくちゃ怒って、キレてそのまま帰っちゃってさ


…そん時、結構な暴言を浴びせかけまくられちゃって…


なんか、ソレがトラウマになってさ、いざえっちってなると、萎縮しちゃって…


言わなきゃ良いのに、いちいち

“俺、童貞で、初めてなんで至らないトコがあると思いますが”

なんて前置きするもんだから、気持ち悪いなんて言われて…


…ソレで、毎回振られちゃって…今に至ってるって訳なんだ」

智「……」


智くんはきっと、さっきの俺とはまた別の意味で言葉を失っているのであろう

俺の情けなさすぎる告白を聞き終わっても、ずっと黙っていた


俺はその沈黙に耐えきれずに、智くんを抱いたまま、ため息混じりに呟いた


翔「…本当に、情けないよ」

智「………そんな事ないよ」


俺の腕の中で、智くんが顔を上げて俺を見た

潤んだ瞳にはもう、涙は溢れてはいなかった


智「…素敵だと思うよ、僕は」

翔「………え?」

智「だって、ちゃんと真面目に“初めてです”なんて、なかなか言えないでしょ?

それってさ、相手に対する気遣いでもあるでしょ?」

翔「へ?……あ、いや……」


気遣いと言うよりは、言い訳と言うか…(汗)


智「真面目で、純粋で……僕は、素敵だと思うな……翔くん」

翔「……あ、ありがとう///」


せっかく智くんが俺の事を“素敵だ”なんて言ってくれたので

喉まで出掛かった“本当はヘタレてる自分を誤魔化す為の言い訳なんです”って台詞を呑み込んで


俺は、自分を優しく微笑んで見ている智くんに、お礼を言った



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