第4章 in ボード(白鳥じゃないよ)
翔「……」
言葉が、出なかった
何て言って声を掛ければ良いのか…解らなかった
智「……僕ね、バカなんだ」
暫く黙ったままで水面を見ていた智くんが、今にも零れそうな雫を湛えた瞳を俺に向けると
静かに呟いた
智「……捨てられて、厄介払いされても……
……ただの愛人だったんだって、解ってても……
……まだ、何処かで……
……奥さんと別れて、僕を迎えに来てくれるかも知れないなんて……
……そんな有り得ないこと、思ってるんだから」
そう言って無理に作った笑顔を、一粒の涙が辿って零れた
俺は、それでも何も言えなくて
…でも、居ても立ってもいられなくて…
何も言わずに、無理な笑顔を作る智くんを
そっと、抱き締めた