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【イケメン戦国】花紅柳緑𑁍𓏸𓈒

第15章 雫と煌めく恋情と / 織田信長




「止まないですね……」
「ああ、一時的な雨ではないらしいな」


信長様とお忍びで市を散策していた、ある日。
突然の雨に降られ、私と信長様は店の軒下で雨宿りをしていた。
朝からいいお天気だったので、もちろん傘は持っていない。
雨が降るなんて完全に予想外だったため、少しだけ心が沈んだ。

(せっかく反物を買っていただいたのになぁ)

薄紅色をした、小花柄の反物。
『貴様に似合う』と信長様が半ば強引にプレゼントしてくれた。
それが濡れてしまうのは、すごく悲しい。
だから、走って帰るという選択肢も取れずにいる。
私が『反物を濡らしたくない』と駄々をこねたから、だよね。

コソッと隣にいる信長様を見上げれば、何か思案しているように見えたけど……
私が見ているのに気づいたのか、優しく紅い目を細めて私の方を向いてくれた。


「このままでは埒が明かんな」
「そうですね、止みそうもないし……」
「反物は濡らしたくない、だが傘もない」
「っ……すみません、わがままを」
「いや、愛らしい我儘など構わん」


信長様はサラッと恥ずかしい台詞を言うと、顎に手を当て私をじっと見る。
そして、何か決めたように口元に笑みを浮かべた。


「やはり、これしかないようだな」
「……?」
「暫し待て」


すると、信長様は肩に掛けてる羽織を脱ぎ、袖を通した。
そして、左側だけ開き胸元を指差す。
私が意味が分からず、頭に疑問符を浮かべていると…
信長様は艶やかに言ってのけた。


「結衣、ここに入るがよい」
「え……」
「貴様は小さい、俺の着た羽織の中に入ることも可能だろう。これなら貴様と反物は濡れん」


(それはつまり…信長様自身が傘になるってこと?)

私は思わず目を見開く。
確かに私は信長様の胸辺りまでしか身長がないから、羽織の中…胸元にすっぽり収まるだろうが。
でも、私と反物は濡れなくても、信長様は濡れてしまう。
私は慌てて首を横に振って、焦った声を出した。


「だ、だめです、信長様が濡れてしまいます!」
「構わん、貴様が濡れぬなら」
「でも、風邪をひいたら……!」
「その時は貴様が看病してくれるのだろう?……来い」


信長様は鮮やかな笑みを浮かべ、私の手を引く。
そして、私は信長様の胸元にしっかりと収まってしまった。




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