第2章 人生初の……
車に揺られて到着したのは昼時で賑わうラーメン店。
五条家で育ってきた伽那夛には肩を寄せるように座るカウンター席やガヤガヤと話し声が行き交う店内、次々と麺を茹で上げて器に入れていく大将など、すべてが初めての光景だった。
「さっさと来いよ」
甚爾が目を丸くして入口で立ち止まった伽那夛を促し、2人はカウンター奥の席に座る。
座席にメニューはなく、胡椒と酢醤油、箸がまとめて置いてあるのみ。
かといって店員は黙々と麺を茹でる大将しかおらず、注文を取りにくる様子はない。
「醤油2つ」
どうやって注文するのかと首を傾げる伽那夛の隣で甚爾が注文してしまう。
「なっ、勝手に……メニュー無かったわよ!?」
「あそこ、よく見ろ」
甚爾が指差す先を見ると、壁にメニューが貼ってあった。
年季の入った紙に達筆で書かれた手作りだ。
何もかも伽那夛の知っているそれと違う。
驚きがまだ収まらない伽那夛の目の前に今度は湯気を上げる丼が置かれた。
「はいよ、醤油2つ」
「早っ」
注文してから出てくるまでのあまりの早さに更に驚く。
甚爾はというと、目を白黒させている伽那夛を面白がって眺めていた。