第1章 喧嘩別れ
悠side
俺たちが住んでいるアパートの周りは案の定化け物がうじゃうじゃ居た。
俺たちの部屋は階段を登って2階の1番奥。
2階には4体ほどの化け物が行く宛てもなくただ歩き回っている。
車から急いで降り、化け物を避けながら2階へと駆け上がる。
今まで興味を示さなかった化け物も俺に気づくと一気に襲ってきた。
「ウア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!」
「どけ!」
頭目掛けて武器を振り下ろす。
死にはしないがダメージは受けているようだ。
倒れて立ち上がること無く這いつくばってくる。
その間に部屋まで走りドアノブに手をかける。
ガチャ
開いている。
扉を開けると部屋は荒らされていた。
血痕もあちこちに付着していた。
「なんだこれ……っ零音!いるか!」
名前を呼ぶが返事は無い。
間違いなく争った跡だ。
零音が化け物に襲われてしまったのかと嫌な予感が頭をよぎる。
「零音っ!」
部屋を見渡すと寝室が開いていた。
2人で使っているベッドの上。
何かがゴソゴソと蠢いている。
ベッドには誰かが仰向けに倒れているのがわかる。
咀嚼音が響く。
化け物に誰かが襲われている。
いや、もう死んでいる。
零音なのか……?
そう思い、倒れている人の上に乗っている化け物の頭をナイフで突き刺す。
化け物は即死して倒れてしまった。
直ぐに倒れている人の顔を確認すると、零音では無いことがわかった。
安心して腰が抜けてしまう。
恐らく化け物から逃げている時にこの部屋が空いていて逃げ込んだのだろう。
寝室に置いておいた2人の写真を手に取り鞄に直す。
大事なものだ。
持っていこう。
俺は部屋を後にし、再び零音を探すことにした。