第4章 歓迎されない来客
一斤分、全てサンドイッチにしたのだけど、殆どをマーフィスが食べてしまった。その後のジャムパンも、しっかり完食したのだった。
「ベッドで休む?」
「退屈かもしれないけどさ、付き合ってくれない?リビングのソファーでいいから。」
「うん、いいよ。」
ソファーに座ると、マーフィスは横になって私の膝の上に頭を置いた。少し慌てた私だったけれど、直ぐに寝てしまったマーフィスに何も言えないまま。
余程、疲れていたのだと思う。それにしても、こんなに無防備な姿を見せてくれるなんて。そっと髪に触れれば、柔らかい感触を感じられた。
「おやすみなさい。」
私はマーフィスに貰った指輪やネックレスを眺めていた。マーフィスの左手の薬指には同じ指輪が光っている。そっと手に触れれば、キュッと握り締められた。
大きくて温かくて安心するマーフィスの手。その温もりに包まれて、いつの間にか私も眠ってしまっていた。
「・・・ったく、無粋なヤツだな。」
「・・・ん?マーフィス?」
「悪い、起こしたか。」
「いいけど、どうかしたの?」
「来客。」
「知ってる人?」
「あぁ、聞き覚えのある声だ。」
外から聞こえる声は、さっきの二人のものではなかった。そして、マーフィスの声はいつもと違い軽快ではないもの。
溜め息を吐きながら、マーフィスは玄関のドアを開けた。そして、現れた人は薄汚れたローブを羽織った人だった。あの時のマーフィスと同じく、ローブのフードを目深に被っていて顔は見えない。
「久しいな、マーフィス。この町に来たのなら、ウチに来てもいいだろうに。ん?その女か。マーフィスの嫁と言うのは。」
ギョロっとした薄暗い目が、私を値踏みするかの様に見ている。その視線を遮ってくれたのは、マーフィスだった。
「なぁ、幾らならその女をワシに売ってくれる?言い値で構わないぞ。まだ手は付けていない様だし、お前の魔力を纏わせた女だ興味を持つ輩がごまんといるだろう。」
マーフィスは盛大な溜め息を吐いた。
「お前のところとは、今後一切仕事しない。」
「そ、それは困る。」
「誰が好き込んで自分の嫁を娼館に売るんだよ。馬鹿なのか?それに、言い値って言うが俺の嫁にそもそも値を付ける訳がないだろ。言っておくが、これ以上俺の気に障ることをするなら娼館諸共消すぞ。気分が悪いから二度と俺の前に姿を見せるな。」