第7章 限界
「…もっと、自分を大事にしろッ」
気付けば、思った事が限界を迎え
喉を通り過ぎて出ていた。
「 私を殺したのは貴方なのに? 」
「…ぇ…?」
笑っていた表情は一変し、俯いて物静かだが確実に聞こえる声で問われた。
だが自分には身に覚えのない話だと思い返すと
彼女の言う“タイムリープ”の存在を感じる事ができる気がした。
ーー自分に彼女を殺した覚えが無いなら
彼女の発言が嘘でないと仮定するのなら
彼女は自分に殺されタイムリープした
そういう話に…ーーー
辻褄という歯車が噛み合う音が聞こえた。
「…この世界に来たのに、
自分は何も知らないフリをして
能能と、ただ生きればいい?
違うだろ。
いつ起きるかも分からない
タイムリープか時空移動の片鱗は
私を、そんな安全な場所に
置いてはくれない。
安全な場所に居る事が出来るなら
この世界に来た理由なんてない!」
初めて、彼女の“本当の姿”を見た。
何処迄も真っ直ぐ過ぎる程の本音と
その瞳は、一片の曇りも無かった。
「…信じますよ。そのお話。」
自分の額に手を当てそのまま髪に指を滑らせてため息を吐く。
その後に出た言葉は彼女を信じると言う言葉だった。
自分でも非科学過ぎて意外だが。
「…元の世界にもシャーロックホームズは居たのか?」
「“居た”かどうかは知らないけど小説は存在したよ。」
「…どこまで話せる?」
「分からない。ただ…
ハムサンド食べてみたい。」
「…ふっ」
知っているんだなと思ったのに、それが食の事で気が緩んだ。
そういえば、と彼女が車を降り運転席のドアを開ける。
「交代!」
真っ直ぐ見つめられて降りる様に催促される。
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