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私が嫌いな私なんて〇したっていいじゃないか

第8章 返り討ちの時間


渚side
後輩の子に煽られて遊夢ちゃんが壇上に上がっていったときは心配だった。彼女がピアノを弾くのは僕が覚えている限り一年ぶりだ

「聞いてみたいって気持ちもあるけど…」
もちろん野次や見下すような発言も沢山されていた

「何あの発言!?しかも後輩なのに!まるっきりゴミみたいな言い方じゃん!!」

「うん、許せない…!」

「大丈夫かな早稲田さん…」

けど、壇上の遊夢ちゃんがこちらに目配せをしてウィンクを飛ばした。
「…(きっと大丈夫)」
その瞬間でみんなの不安は一気に晴れた気がした



『そうですね、皆さまお忙しいようですので少し短めの曲にしましょう。
それではお聞きください。シューベルト作曲で有名、「魔王」』




ダ―ンと重々しく強い音から始まり、三連符を奏でる。
その四秒後、みんなは驚いた。
語り部の部分をあの迫力のある大音量の中遊夢ちゃんが弾き語りを始めたのだ。しかもイタリア語で。

そこからはすべて彼女の独壇場だった。グランドピアノから出る禍々しくも魅了されるオーラと音色にみんなが目を離せなくなっていた

これこそ……本物の魔王だ…!

最後の一音を叩きつけると、皆が現実にひき戻された。



だが、誰もが拍手喝采をやめることはできなかった…!

「遊夢ちゃん、君の音楽久々に聞けたよ…!」




ーーーー

私は演奏が終わると椅子から降りて五礼した。壇上を降りようとすると彼女が悔しそうにこちらを見ていることに気が付いた。

『あ、本日は御入賞おめでとうございます』

一礼してみんなの元へ戻っていった




「早稲田さん…い、今…なに…何が起きた…!?」
帰ると茅野さんが真っ青になって震えながら私の肩を掴んだ

「あれ、カエデ知らないんだっけ?」

「茅野さんは最近転校してきたから遊夢さんの演奏聞いたことないかも」
横からひょっこり顔を出した中村さんと神崎さんが代弁する

「ウチの早稲田遊夢はねー本校舎にいたとき、楽器同好会に入ってたんだけどね、あらゆるコンクールの特賞を総なめにしてきた女なんだよ!
ま、今はエンドのE組行きで演奏すらも聞けなくなっちゃったけど」

「………えげ」

もはや声も出なかったらしい
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