第26章 真夏の大合戦の時間
ロヴロさんに教えてもらった通り、先生の鼻の敏感さを踏まえて、二人の匂いがする”ダミー”は陸に置いて来た。
すいとんの術。かつて忍者がいた時代に使われていたと言われていた技
今、中は弾幕と水で外の様子も、音も、キャッチできない
現れた二人は銃口を向け、銃身を合わせる
私達は二人の存在に気付かれる前に乱射を続けなければならない。
『(やっぱり実践でもマッハには追い付かない。
大丈夫…私は二人を信じて、ただ標的を撃つ)』
そう思うと自然に心が集中してくる
次の瞬間、パンと乾いた音が聞こえた。二人が撃った二つの弾は先生の頭へ一直線に飛んでいき、
命中した
そして、波の中から光が漏れ、大きな爆音が島に響いた
目を開けると、もう建物の跡形はなく、ただ、ゆったりとした波の中美しい星たちが光り輝いているだけだった
「や……殺ったのか!?」
誰かが言った言葉を聞くが、皆、瞬時に冷静な頭に切り替えた
「油断するな!! 奴には再生能力もある、片岡さんが中心になって水面を見張れ!!」
「はい!!」
片岡さんがゴーグルをつけ先生がどうなったかみんなで目を凝らして見張る
先生の姿が見つかったのはそれから数十秒後の事だった
「あっ」
と倉橋さんが声を上げた。そこからはブクブクと泡が飛び出している。
「…おい」
杉野さんの静かな合図に銃を向けた
ぽっかりと出てきたのは…
オレンジのガシャポンのような球体の先生だった
「「「「(何あれ…)」」」」
「これぞ先生の奥の手中の奥の手。完全防御形態!!」
「「「「(はあ?)」」」」
「外側の透明な部分は…高密度に凝縮されたエネルギーの結晶体です。肉体を思い切り小さく縮め、その分余分になったエネルギーで…肉体の周囲をガッチリ固める。
この形態になった先生はまさに無敵!! 水も、対先生物質も、あらゆる攻撃を結晶の壁がはね返します」
つまりおにぎりになったということ。
「…そんな、じゃ、ずっとその形態でいたら殺せないじゃん」
「ところがそう上手くはいきません。
このエネルギー結晶は…24時間ほどで自然崩壊します。その瞬間に先生は肉体をふくらませ、エネルギーを吸収して元の体に戻るわけです」