第20章 おかえりの時間
その話をバッチリ聞いていた先生が彼女に必死で説得を試みた
「早稲田さん!!今すぐこんな戦いは辞めるんです!!そうでなければ貴方が死んでしまう!!
貴方は騙されているんです!!」
『そうやって私を逆に騙そうとしたって無駄だよ。
だったら貴方達は私を救ってくれるの?どうやって?
結局何もできない癖に
あは!そもそも私が話さないんだから元々無理かぁ』
「どうやら触手と絶望の影響で洗脳効果もあったらしい。都合がいいね。
フフフ、殺せたなら生かしてやる道も考えなくはないけどね」
「ッ…早稲田さんやめて!!」
「頼むから触手をおろしてくれ!!」
「俺たち早稲田さんの死体を見にここに来たんじゃねえ!!」
みんなの辛辣な叫び声も彼女の耳には届かない。
『ふふふ、なんだかライブのコールみたいだね。楽しい。
あ、そうだ』
すると彼女はどこからかコンパクトなマイクを取り出し、耳にかけた
「まさか、このまま歌うの?」
『勿論。
ワタシを誰だと思ってるの?
音楽を誰よりも愛する”歌姫”Mineだよ!』
次の瞬間、あのMine独特のがなり声が響く。スピーカーの調節ができていないためか、会場は耳を裂くような音に包まれた。
すると、
彼女の触手達が音楽に合わせて動きも俊敏になった
「音に…反応してる?」
『ねえ、知ってる殺せんせー?
触手って意外と感情に左右されやすいんだけど。怒りが膨張すると、最大のパワーが出せるけど、隙ができやすい。逆に爽快感で包まれれば、程よく、冷静なままパワーアップできる。
せんせーの黒い触手がその例だね』
だから彼女は歌ったんだ。自分が歌が好きだから
彼女の触手が室内に、雨のように降りかかる
ザシュッ
『アハハ、まずは一本ゲットだね』
シロに教えられた情報。殺せんせーは、再生する度にスピードが落ちる。弱体化した触手とは言え、この戦いでも肝になることは変わりない
「遊夢ちゃん…」
あの時と同じ、見ることしかできない僕等は持っているナイフを握り締めた
どうすれば…
その時、一番に足を出したのは
「…茅野!!」