第20章 全てが甦り
アパートと呼ばれる住宅に入ると私は驚いた。
ふわりと私が使っている香と同じ匂いがしたため。
「この匂い…。」
「忘れてたけど、記憶なくす前の私が取っておいてたみたいなんだよね。2本しかなかったから折って使って部屋の香りにしてたの。」
「……そうなのか。」
「……お父さんは元気?」
「任務中に利き腕とアキレス腱をやられてしまってね。それ以外は変わらない。
そのせいでこちらでの仕事は辞めたが。」
「そうなんだ…メッセで仕事引退したことは聞いてたけどそれだったんだね。
…みんなは?元気にしてる?」
「本丸にいる皆も変わらないよ。………雛鳥。これも思い出したりするのかい?」
「お守り?」
ポケットから赤い布の守りを見せてみた。
断片的だけど覚えてると雛鳥は驚いていた。
これは私とサヨナラする前に作った、ボロボロになった刀剣守り。
「え、これどうして…」
「小鳥が怪我を負った戦の時、小鳥を庇った私は破壊されたんだ。」
「……!」
「小鳥から支給されてた守りも、戦い中紛失してね。
そしたら、君がこっそり入れていた守りが私を復活させてくれた。
復活させた際に少しボロくなってしまったんだ。
大切にできず、すまない。」
雛鳥は涙を流し首を横に振った。
「お守りなんていくらでも作るよ。
山鳥毛……良かった…ほんとに……ほんとに無事で。」
雛鳥はそこにしゃがみこんでしまった。
雛鳥の傍に寄り、抱きしめる。
「雛鳥…ありがとう。
それほど想われてたことが私は嬉しい。」
子どものように泣きじゃくる雛鳥に私の胸は苦しくなった。