第19章 彼が来た理由
ドゴッと鈍い音が響いた。
小鳥の拳が私の腹に食い込む。
「んぐ……!がは……!」
「うし、スッキリした。
行ってやれ。会ってることは許してやるからよ。」
顔を上げると小鳥は優しい顔をしていた。
肩をバシバシと叩きいつもの笑みを浮かべている。
「しかし…!」
「アイツは家内に似ていい女になってただろ?
何処の馬の骨とも分からんやつより、付喪神の俺の近侍の方が安心出来る。」
私はすまないと再度頭を下げてからまた現世に向かった。時間も時間だったため茶屋にはいないであろうと思い周辺を歩く。
少し遠くで若い男女が、歩いているのが見えた。
だが少し様子がおかしい…。
女の方が少々ぐったりしていたのが気になりそちらへ行くと、女は雛鳥だった。
男から雛鳥を返してもらい、茶屋へ向かった。
「すまない、誰かいるか?」
戸を叩くと、いつもの店主が顔を出してきた。
「おや?どうしたんだい?
もう店は…。」
「すまないが少し座敷を借りてもいいかな?
雛鳥の様子がおかしくて。」
店主はキョトンとしていたが雛鳥の様子を見て、すぐに分かったと座敷に通してくれる。
私は座敷に雛鳥を下ろして見守るように座って待っていた。